普段何気なく食べている牛肉が、どのような環境で育てられているか、気にしたことはありますか?
実は、私たちの食卓に並ぶ牛肉の多くには、成長を早めたり、肉質を変えたりするための「モネンシン」や「エストロゲン」といった物質が関わっています。
これらは牛の生育効率を高める一方で、私たちの健康や肉本来の風味に影響を与える可能性も指摘されています。
モネンシンの問題について
和牛の品質や安全性は、その飼育環境や与えられる飼料によって大きく変わります。
しかし現在、多くの消費者が知らないまま食べている牛肉には、
成長促進物質が関係していることをご存知でしょうか?
これらの物質は、牛の成長を早めたり、肉質を変えたりするために使用されますが、
人間の健康や肉の味・食感に影響を与える可能性が指摘されています。
食後に「なんとなく胃が重い」「脂がしつこく感じる」原因は、モネンシンが関係しているかもしれません。
しかし、現状ではモネンシンの使用有無を消費者が判断することはできません。
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モネンシンについて
モネンシン(Monensin)は、牛の飼料に添加され、牛の「成長スピード」を無理に加速させる抗生物質の一種です。
モネンシンは、牛の消化器官内の微生物バランスを変え、飼料の消化効率を向上させる目的で使用されます。 -
モネンシンの役割
- 牛の第一胃(ルーメン)の細菌バランスを調整し、消化を助ける
- ルーメンアシドーシス(胃の酸性化)を予防する
- 飼料の吸収率を高め、成長スピードを加速させる
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モネンシンの影響
一見、成長を促す「良い効果」があるように思えますが、モネンシンを使用すると、牛の脂肪の性質が変わり、肉の質や食感に大きな影響を与えてしまうのです。
この結果、牛脂の融点(溶ける温度)が高くなり、40℃以上になってしまい、体温(36〜37℃)では溶けにくく、消化に時間がかかり、胃もたれを引き起こしやすくなります。
モネンシン使用 不使用の牛脂の違い
| 項目 | モネンシン使用 | モネンシン不使用(自然飼育) |
|---|---|---|
| 脂肪の融点 | 40℃以上 | 28〜30℃ |
| 口どけ | 溶けにくく、しつこい脂に感じる | 口の中でとろける |
| 消化のしやすさ | 胃もたれしやすい | 胃もたれしにくい |
| 味わい | 風味が薄く、脂が主張しがち | 旨味が凝縮し、しつこくない |
輸入牛に多いエストロゲンについて
エストロゲン(Estrogen)は、牛の成長を促し、肉質を一定の状態に保つために使用されるホルモン剤で、
特に海外では、牛の飼育期間を短縮し、
生産コストを抑えるためにエストロゲンが一般的に使用されています。
日本では、エストロゲンの安全性に懸念があり、すべての食肉用牛への使用が禁止されています。
これは、以下のような健康リスクが指摘されているためです。
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発がん性の可能性
- 乳がんや前立腺がんのリスクが増加する可能性
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ホルモンバランスの乱れ
- 特に妊婦や子どもへの影響が懸念される
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生殖機能への影響
- エストロゲンの摂取が精子の減少を引き起こす可能性
海外と日本のエストロゲン使用状況
| 国・地域 | エストロゲンの使用状況 |
|---|---|
| アメリカ | 一定の基準内で使用許可 |
| カナダ | 一部の牛に対して成長促進目的で使用 |
| EU(欧州連合) | 1988年以降、全面禁止 |
| 日本 | 安全性の懸念から全面禁止 |

